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「ネンネンコロリ」より「ピンピンコロリ」PPKプロジェクト
●光害(ひかりがい)

明るすぎる都会の夜、光の洪水は「光害(ひかりがい)」になる  

ダンディズム 2024.12.03

人間にとって夜が闇でなくなったのは近代になってから。昼は太陽、夜は月明りとろうそくなどの灯で暮らし続けた人間にとって、屋内外の明るすぎる照明や看板、ディスプレーなどが発する光は人工のもの。過度な明るさが健康を脅かす「光害」になることもある。

 光害による健康被害としてあげられる不眠。夜に強い光を浴びると暗い環境下で脳の松果体から分泌される睡眠ホルモンのメラトニンが減り、これが不眠の引き金となる。不眠はやがて睡眠障害となって認知機能障害やアルツハイマーのリスクを高めてしまう。
 さらに夜の強い光は概日リズムも乱す。概日リズムとは生物が地球の自転による昼夜変化に同調して約24時間周期で体内環境を変化させる機能のことで、これが乱れると肥満、糖尿病、うつ病などのリスクが上昇。結果的にアルツハイマーの危険因子になるのだ。
 2019年、学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」は、現代の家庭で一般的な夜間の光量を浴びた被験者はメラトニンの作られる量が平均50%低下したと発表した。
 但し被験者ごとの光への感受性は最大で50倍以上の差があることから、浴びた光量とメラトニン量の低下は比例しないものの、多かれ少なかれ影響があることは否めない。
 同じく感受性によって差はあるものの、ホルモン感受性の乳がん、大腸がん、前立腺がんも光害によって罹患率が高くなるほか、腸内フローラの日々の変動周期を乱すこともわかっている。
 こうした光害を深刻化しているのがLEDの普及。省エネになるLEDは世界中に普及し都市部では無数の電光看板やイルミネーション、住まいでは照明、PC、タブレット、スマートフォン、テレビなどありとあらゆる場所で使用されている。
 ところがLEDの特徴である波長の短い青色光、いわゆるブルーレイは赤色光の10倍もメラトニンを抑制するとされ、使いすぎを危惧する研究者も多い。
 こうした光害から身を守るために夕方以降は照明を最小限に抑える、就寝前にスマホを見ないなどが知られているが、徹底した光の排除を訴える研究者は寝室のエアコンのライトまで黒いテープで覆うことを推奨している。
 我々が古代から持ち合わせている概日リズムを崩さず良好な睡眠を得るためには、意識的に暗い夜を取り戻すことが必要なのかもしれない。
   

 

 

 

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